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校長通信 響き合う学校 平成28年度3学期始業式式辞

 皆さん、新年あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。年末から年始にかけて皆さんが補習や自主学習、部活動やボランティア等で頑張ったことを聞いています。皆さんは私たちにとって誇りある生徒です。そうした皆さんに3学期の始業式式辞を送ります。

まず最初に今日は詩のプレゼントから入ります。

カムチャッカの若者が  麒麟の夢を見ている時

メキシコの娘は  朝もやけの中でバスを待っている

ニューヨークの少女が  ほほえみながら寝返りをうつとき

ローマの少年は  柱頭を染める朝陽にウインクする

この地球では  いつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ  経度から緯度へと

そうしていわば交替で地球を守る

眠る前のひととき耳をすますと

どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴っている

それはあなたの送った朝を

誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ 

 谷川俊太郎さんの「朝のリレー」です。今年、私が送った年賀状の詩です。  2学期の終業式の式辞で話したように世界は“自国第一主義」のリーダーが多く選ばれ、今後も選ばれてきそうな情勢です。世界がこれからどうなっていくのか、この日本がどうなっていくのか、注目して見ていく必要があります。自分のことだけでなく、周囲にいるみんなの幸せを考えることが、テロや戦争の無い、地球規模で起きている温暖化問題、食料問題、資源問題等の問題を解決していく道だと考えています。そのため今年もしっかり勉強して、本も読み、新聞も読み、映画や演劇もみて、いろいろな活動もして、一人一人の考える力や想像力や感性、そして最も大切な行動する力を育てていって欲しいと願っています。

 1月3日の中日新聞朝刊に「社説を読んで下さい」というコラムが掲載されました。新聞社、記者の人たちのこの国の行方に対する危機感がこうしたコラムを創りだしたと考えます。

 記事の最後の部分です。 「私たちはこう考えます。社説を読んで賛同してもらえるか、反対されるのか、それとも一部賛成.一部反対か、どれも歓迎します。大切なのは、この国、この社会をよくしていくにはどうしたらいいか、ということことです。だから一緒に考えて欲しいのです。」

 新しい年、新聞を広げて社説を読む。毎日少しでもいいからこの国のあり方、社会のあり方、それに繋がる自分のあり方を考えて欲しいと願います。

 年末にデンパークで「願い事カウントダウン」という催しをたくさんの人たちと開催しました。皆さんたちの何人かとも会う事ができました。多彩な企画で来場して頂いた皆さんに喜んで頂きました。皆で何かをつくる、皆で一緒の時間を過ごす、皆が一緒に楽しむ、何よりも人と人との繋がりを強く感じた一日でした。

 正月3日から5日にかけては東北の被災地に出かけてきました。年末に弦楽部や野球部、サッカー部の皆さんが被災地を訪問し、お世話になったお礼を兼ねての訪問です。  その際に映した写真の一部は私のfacebookで紹介しています。一人でも多くの人に被災地の復興がまだまだということを伝えていく必要があります。昨年の12月段階で福島第1原発に関連して自宅に戻っていない人13万人、岩手県、宮城県、福島県で震災復興の仮設住宅、応急住宅入居者8万人、この現実を同じ日本人としてどう考えるか、とても重要な問題です。被災地に足を運ぶこと、足を運ばなくても気にかけること、思いやることはこの国のあり方やこの社会のあり方を考えることに繋がっています。

 合唱部の人たちが昨年の夏に気仙沼の大島という離島にコンサートにでかけてくれました。4年連続の訪問です。野球部、男子サッカー部の皆さんは今年もこの大島を訪問してくれました。

 4日に大島に住むゆず農家の小山由起子さんという方を訪問しました。野球部、男子サッカー部の皆さんのボランティアに感謝し、合唱部の皆さんの活動に感謝していました。

 訪問したおりに合唱部の人たちが書いた手紙を見せてくれました。すべての手紙が心のこもった内容のある手紙でした。小山さんにとってはすべてが宝物になっていました。

 その手紙の一つに「見えないものが見えてきた、」という文章がありました。概要は次のような内容でした。  「合唱部の演奏会に小山さんがかけつけてくれた。人数は少なかったが小山さんから亡くなっていった多くの人も今日は聴きにきている。だからその人たちにも聴かせてあげて下さい、と言われた。世の中には目に見えるものの他に、目に見えないもので大切なものがあるということを教えられた。見えないものが少し見えてきた気がする、これらから目に見えないものを意識して毎日を過ごしていきたい。」そんな内容でした。 「自国第一主義」はともすれば目に見えるものばかり追い求めていく生き方のように私は思います。  ぜいたくと便利さを追い求め、エネルギーを浪費する現代の社会が、人々を幸せにしているのかどうか、私は疑問に思っています。いつどこで巨大地震が起こるかわからない、そうした時代にも入っています。防災費は大丈夫なのか、国の予算をどう使っていくのか、このことも国民ひとりひとりが考えなければならない問題です。

 この国をどうするのか、この社会をどうしていくのか、私たち一人一人が問われています。

 12月31日に岡山県にあるノートルダム清心女子大(岡山市北区)の学長、理事長を勤めた渡辺和子さんが亡くなりました。89年間の生涯でした。  渡辺和子さんの著書「置かれた場所で咲きなさい」という本は是非、読んで下さい。たぶん、渡辺さんの生き方に共感し、これからの生き方のヒントになります。図書館で借りてでもいい、是非、今年の読書計画の一冊に加えて下さい。

昨年101歳で亡くなったジャーナリストの「むのたけじさん」は次の言葉を残しています。

〈どうなる〉ではなく〈どうするか〉だ。 卒業後をどうするか、20代、30代をどう生きるか、卒業後をどう生きるか、考え続けて欲しいと思います。  見えないものが見えてくる、見えてくるから行動に繋がっていくわけです。行動に繋がらないのは学びがまだ貧弱だと思って下さい。

3年生の皆さんの高校生活はあとわずかです。今まで以上に一日一日を大切に生きて下さい。今日の一日が未来のあなたを創ります。センター試験を受ける人たちの健闘を祈念します。進路がまだ定まっていない人が少しいますが、その人たちの進路が決まっていくことも祈念しています。  2年生、1年生の皆さん、3年生の皆さんの高校生活はあと40日余です。3年生の皆さんに堂々と胸を張れる高校生活を創って下さい。そして3年生の先輩のために素晴らしい卒業式を創り上げて下さい。  3学期が皆さんにとって、そして皆さんの家族や友人にとって、日本だけでなく世界全体にとってよい学期にしましょう。よい3学期、よい2017年度のスタートがきれることを願って式辞を終わります。

                 2017年1月10日 安城学園高等学校長  坂田 成夫