校長通信「響きあう学校」

校長通信 響き合う学校 2015年9月号

H27年9月号

響きあう学校      安城学園高等学校だより2015.9.23(水)第148号

安城学園高等学校長 坂田 成夫
   
  「朝」 水内喜久雄
 
 生まれたての この空は あたらしい 光にとけ
 やわらかな いのちの風が ぼくに ささやく 
 蒼い空 見つめて 泣いていた ひとりの夜
 だいじょうぶの 言葉が いま たしかに 聞こえて
 この 地球(ほし)に 生きている 
 ちっぽけな このぼくも できること あるのだろう  
 さわやかな かおりの風が 空に きらめく
 やさしさが あふれて まぶしい 希望の朝
 まっすぐな 願いが いま たしかに 届いて
 この 地球に 生きている

【今月の作者と詩 水内喜久雄】 
 1951年福岡県生まれ。著書に「輝け!いのちの詩」「いま、きみにいのちの詩を」「1編の詩がぼくにくれたやさしい時間」「おぼえておきたい日本の名詩100」などがあります。2007年から中日新聞の文化欄で連載をしたコラム「詩と歩いて」は「ステキな詩に会いたくてー54人の詩人をたずねて」という本になっています。特に中高生に向けて素敵な詩を紹介する活動にも力を入れています。
 紹介した詩は2011年4月から入院していた水内さんがいのちについて考え、創った作品です。震災直後でもありいろいろな想いが詰まった詩で、元気を頂ける詩です。

【思いを馳せる学園祭を創る 学園祭にぜひ来校下さい】
 25日、26日と開催される本校の学園祭のテーマは「祈年」です。東日本大震災の被災地の復興を願うという意味もあり、日本の平和、世界の平和を祈るという意味が込められていると聞いています。
素晴らしいテーマを考えた生徒の皆さんに敬意を表します。
「バカの壁」の著者、養老孟司さんは教養を他人の心がわかるということであると言っています。
 他人の心がわかるということは常に人に対する思いやりや想像力が必要になってきます。「祈念」を考えるとき、相手に思いを馳せるということが最も大切に思います。
 本校の学園祭で一貫して取り上げているテーマは「平和」です。今年は戦後70年間、なぜ、日本が紛争や戦争に巻き込まれることなく現在に至ったのか、今後の日本の国際貢献のあり方などを考えることが重要です。沖縄の基地問題、原発事故で苦しむ福島、復興が遅れる東北の被災地の人たちのことも考えなければいけない問題です。パレスチナやイスラエル、シリアやイラク、ウクライナやアフガニスタンなど紛争で苦しむ国々の人を考えることも大切です。いろいろな人たちに思いを馳せることが「平和」を考えることです。
 学園祭を通していろいろな世界や人に対して“思いをはせる“ことをして欲しいと願っています。
 百聞は一見にしかず(いくら人から聞いても、自分で見なければ本当のことはわからない)
 百見は一考にしかず(いくらたくさん見ても、考えなければ前に進まない)
 百考は一行にしかず(どんなに考えても「行動」を起こさなければ前には進まない)
 生徒たちは準備によく頑張ってきました。是非、学園祭に足を運び、生徒たちの作品を見て頂きたいと思います。よろしくお願いします。

【安保法制成立】
 9月19日未明、集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法案が参議院本会議で成立しました。憲法違反の疑義も指摘され、今国会で成立させなくてもよい、反対だ、という世論が多くある中での採決でした。9月15日に発表されたNHKの世論調査でも安全保障法制を今国会で成立させる必要があると応えた人19%、反対は45%、どちらともいえない30%で明らかに反対が多いという結果がでていました。私の周りでも、反対や理解できていない人、決め方の強引さを心配している人は多くいました。
 今回の安保法制成立の過程のなかで「憲法とは」「平和とは」「国を守るとは」「国際貢献とは」「民主主義とは」「立憲主義とは」「政治家とは」など、より考えていかなければならない問題が国民1人1人に提起されたように思います。安保法案成立が日本を成熟した国家にするための新たな「始まり」の一歩になる様に注視していきたいと思います。

【戦場体験証言集会 語らずに死ねるか 9月20日 東京・日比谷公会堂】
 東京•日比谷公会堂で開かれた集会に初めて参加しました。戦後70年、戦争体験者が少なくなって行く中で、必死に体験を残そうとする人たちを応援したいという思いもあり出かけました。会場には約1500人ほどの人が参加していました。若い人たちもサポート役として多く参加していました。証言したのは22人の方で沖縄戦を体験した女性、東京空襲を体験した女性、家族でパラオへ移住した女性など一部を除きほとんどの方が90歳を超えていました。
 戦争がすべての人の人生を変えてしまい、家族や知人の人たちの悲しみや苦しみにつながっていくということをあらためて考えさせられました。多くの人たちが飢餓で苦しみながら死んでいった状況、応援部隊も来ない中で部隊が全滅して行った状況も語られました。

* 勝ち戦(かちいくさ)は勝った、勝ったという気持ちばかりで人を殺しても何とも思わない。悲壮な思いではあったけど、無我夢中であった(95歳 ビルマ)

* 戦後、東京へ返すとの声に騙され、ソ連に連れて行かれました。アムール川を渡ったのは私の17歳の誕生日でした。シワキ収容所には千人ほどの日本人捕虜が収容されていました。冬は零下30度を超え、私は凍傷になり、腐った足の先を切りました。私は戦後ずっと片足で生きてきました。(中国 87歳)

* 大鳳(空母)が突如大爆発。乗員もミイラのように焼けただれ、それでも横付けして戸板を渡し救助に当たろました。(88歳、駆逐艦・磯風)  

* 戦車に飛び込む人間地雷に「賛成」と書いて提出。回答を集めた区隊長は初めてにっこり笑い、全員希望したと話しました。(86歳、陸軍少年飛行兵学校)  

* 夜中にパッと立ち上がって、「汽車が出るんですね、家に帰れるんですね」「みそ汁が食べられるんですね、ぼた餅が食べられるんですね」そんな事を言ってバサッと倒れて死んでいく。(86歳、少年兵・シベリア抑留)  

【9月の読書「原爆投下 黙殺された極秘情報」 NHKスペシャル取材班 新潮文庫550円】 
 夏休みに読んだ本の中の一冊です。NHKスペシャル取材班の「ある疑問」からつくられた番組の取材過程から取材班の思いなどが本になっています。広島、長崎の原爆投下を日本の軍部が、政治家が事前に知っていたかどうか、日本の科学者がアメリカの原爆製造能力をどうみていたか。なぜ原爆が投下されたのか、興味ある内容が公開されています。是非、読んで下さい。
(夏休みに読んだ他の本もいくつか推薦します。今年の夏は44冊の本を読みました) 
日本人はなぜ戦争へと向かったのか(新潮文庫)昭和最後の日(新潮文庫)日本海軍400時間の証言(新潮文庫)楽園のカンヴァス(新潮文庫)火車(新潮文庫)生きて帰ってきた男—ある日本兵の戦争と戦後—(岩波新書)シベリア抑留(岩波新書)日本人の叡智(新潮新書)朝鮮人強制連行(岩波新書)職人(岩波新書)商人(岩波新書)芸人(岩波新書)ラプラスの魔女(角川書店)過ぎ去りし王国の城(角川書店)鹿の王上•下(角川書店)里海資本論(角川新書)国民なき経済成長(角川新書)冬を待つ城(新潮社)等伯上下(文芸春秋)火花(文芸春秋)石巻市立湊小学校避難所(竹書房新書)河北新報の一番長い日(河北新報社)震災の記録(南三陸町福話会)与楽の飯(光文社)鬼神の如く(新潮社)

【9月後半から10月中旬の主な行事】
 9月25日~26日(金•土) 学園祭
10月2日(金) 生徒会立会演説会  
10月3日(土) 学級懇談会
10月13日(火)~16日(金)第3回定期試験