校長通信 響き合う学校 平成28年度入学式式辞
平成28年度入学式式辞
今日はよい天気にめぐまれました。桜の花もまだ見事に咲いていますが、よくみると枝の先に新芽が顔をだしています。満開の桜がつい先日送り出した卒業生だとすると、新芽が今日、入学される皆さんにみえてきます。そのように考えると3年間で皆さんがどう満開の桜になっていくか本当に楽しみです。春はあらゆるものに可能性を感じさせます。そして今日は入学式にふさわしいよき日になりました。この良き日にPTA会長様と保護者の皆様のご臨席をいただき、平成二十八年度の入学式ができますことに感謝いたします。 新入生の皆さん、歴史と伝統ある安城学園高等学校への入学おめでとうございます。本校教職員と在校生は皆さんの入学を歓迎します。安城学園は1912年、明治45年に寺部だい先生と三蔵先生が私財をなげうってつくった私立の学校です。全国でも歴史の古い学校の一つで、現在では一つの大学、一つの短期大学、二つの高等学校、三つの幼稚園をもつ総合学園としてこの三河の地に存在しています。
創立者は女性の社会参加も与えられていない明治時代に女性の無限の可能性を信じ、女性が人間として自立できる社会をめざして安城学園を苦労して創立しました。創立者は清楚できちんとしており、礼儀正しい方でありました。掃除や片付けも率先して行い、物を大切にし、針1本にも命が生きているといい、廃物から新しいものを工夫してその命を生かしました。努力の人で、人を思いやり、他人に迷惑をかけることを恥とした生き方をしました。そして何よりも人間の可能性を信じ、自立を一生の身上として貫き通した方でした。皆さんが入学した安城学園は時代が変わっても創立者が大事にしてきた生き方を教育の柱においている学校です。それが建学の精神になっています。
創立者が大切にしてきた生き方は四つの言葉に集約され、今も受け継がれています。「真心、努力、奉仕、感謝」という言葉です。安城学園の4大精神と呼んでいます。真心をもって人に接し、常に努力する、何事にも奉仕の気持ちを持って取り組み、感謝の気持ちをもってことにあたる。そうした心の持ち方・精神が創立者の生き方であり、教えです。
人間の可能性は無限です。人間の持っている無限の可能性を引き出す、それが創立者の生き方、信念です。創立者の生き方に学び、皆さんが「奉仕・真心・努力・感謝」の四大精神を大切にしながら安城学園の3年間を送って頂くことを心から期待しています。創立者の生き方は「おもいでぐさ」という本に詳しく書かれています。保護者の皆様にも、読んでいただくことをお薦めします。
学校法人安城学園は4年前に創立100周年を迎えました。その前年の3月11日に東日本大震災が起きました。本校ではすぐに「東日本から学ぶプロジェクト事業」をスタートさせ、昨年までの5年間で毎年150名から200名前後の先生、生徒が被災地の宮城県、岩手県へ出かけ交流活動に参加しています。学園祭には岩手県大船渡東高校の生徒が毎年来校し、交流しています。被災地からの学びは本校にとって貴重な学びになっています。もし、機会があったら皆さんも参加することを勧めます。
入学式に当たり創立者寺部だい先生の言葉を2つ紹介します。一つ目は“挨拶は社会を通っていくための一つの切符です”という言葉です。電車に乗るためには切符が必要です。切符があるから電車にのることができます。挨拶は人生を生きていく上でそれほど重要なことだということです。創立者は大切なものとして挨拶、お辞儀、言葉の使い方、応接の仕方をあげています。「挨拶」や「お辞儀」「応接」ができるということは相手を尊敬する気持ちを持つということです。「挨拶」や「お辞儀」「応接」等ができるということは大切なことです。
二つ目は“夜寝る時には自分の本を読みなさい”という言葉です。寺部だい先生は本を読むことの大切さを教えていますが、自分の本を夜寝る時に読みなさい、と教えています。夜、寝る時に自分の本を読むとは、一日の終わりには必ず、今日の一日を振り返りなさい、ということです。夜寝る時に5分でもいい。今日一日あったことを振り返る、できたこと、出来なかったことは何か、勉強がしっかりできたか、手伝いができたか。挨拶ができたか、人に優しくできたか、振り返ることです。一日を振り返って明日の計画を立てる、それだけで次の一日の送り方は変ってきます、という教えです。是非、二つの言葉を実践して下さい
現在は忙しい時代、せかされている時代です。何かに追われているように毎日が過ぎている時代です。朝、おきたら空を観る、日の出を観る、夕方、夕焼けを観る、星空を見る、そんな時間が必要です。ゆったりした時間を一日の中につくる、そうした時間の中で振り返る、振りかえることが、誰かに思いをよせるということにつながっていきます。
空をみながら、東北の被災地の人に思いをよせる、原発で避難を余儀なくされている福島の人たちに思いをよせる、内戦や飢餓、貧困で苦しむイラクやシリア、アフガニスタン、アフリカ、世界の国々の人々に思いをよせる、そうした思いをよせる人が増えていくことが世界の平和につながっていくと信じています。
新入生の皆さん、伝統ある本校で、夢と目標を持って、明るく、たくましく、多様な学びに挑戦して下さい。思いや決意そして挑戦するという行為が今日をつくり、未来につくって行きます。日常の勉強もとことんして下さい。今までの人生で経験したことがないといえるほど3年間勉強して下さい。部活動にもとことん全力投球して下さい。本校は全国の舞台で活躍するチャンスが多い学校です。皆さんが全国の舞台で活躍することも期待しています。クラス活動や生徒会活動にも積極的に参加し、地域や社会と繋がる自主活動にも参加して下さい。生徒会や教科が企画するさまざまな学びにも積極的に参加下さい。海外へのホームスティ、夏のオーストラリア、冬のイギリスへも是非、参加してみて下さい。そして何よりも3年間で本をたくさん読んで下さい。そのすべてが皆さんの高校3年間になり、皆さんの18歳からの人生に繋がっていきます。誰でも無限の可能性を持っている、カギは「挑戦」です。自分の中に壁を作らず、壁に出会ったら何回も、何回も壁を乗り越える体験をしていくことです。それが高校時代にはとても重要です。
学校法人安城学園では100周年を期して「三つの挑戦」を提示しています。 「第一の挑戦」とは今まで取り組んできたけれどもうまくできなかったことに再度、挑戦する。不得手なことへの挑戦です。「第二の挑戦」とは今まで取り組んできて、うまくできたことをさらにレベルアップさせるための挑戦です。得意な分野をさらに得意にする挑戦です。「第三の挑戦」とは今まで取り組んだことのないこと、未知の自分を発見するための新しいことへの挑戦です。「三つの挑戦」は「真心、努力、奉仕、感謝の四大精神」の体得とともに意識して下さい。不可能の反対語は可能ではありません。不可能の反対語は挑戦です。挑戦することで必ず何かが生まれてきます。逃げないで、諦めないで、挑戦することを大切にして下さい。 最後に本校の学園の歌「いまここに」の作詞者である谷川俊太郎さんの「生きる」という詩の1部を朗読します。「生きる」 谷川俊太郎
生きているということ いま生きているということ それはのどがかわくということ 木もれ陽がまぶしいということ ふっと惑るメロディを思い出すということ くしゃみをすること あなたと手をつなぐこと
生きているということ いま生きているということ 泣けるということ 笑えるということ 怒れるということ 自由ということ (中略)
生きているということ いま生きているということ 鳥ははばたくということ 海はとどろくということ
かたつむりは はうということ 人は愛するということ あなたのてのぬくみ いのちということ
今日からみなさんの高校生活がスタートします。豊かで、充実した高校三年間になるかどうかは皆さんの想いと意志、挑戦にかかっています。真心、努力、奉仕、感謝という安城学園の四大精神を毎日の生きる糧として大きくたくましく成長していって欲しいと顧っています。
最後になりましたが保護者の皆様、子供を取り巻く社会状況は難しくなっています。大人の仕事は子供をきちんとした大人にすることです。子供をきちんとした大人に育てるために一緒に手を携えてください。安城学園は大人が参画できる学校です。土曜講座や学園祭、PTAの研修など、楽しめる企画も多彩にあります。地域の祭りにも積極的に参加している学校です。三年間の御支援、御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
平成28年4月6日 安城学園高等学校長 坂田成夫