校長通信 響き合う学校 2016年4月号
H28年4月号
響きあう学校 安城学園高等学校だより 2016.4.28(木) 第155号
安城学園高等学校長 坂田 成夫
【朝のリレー 谷川 俊太郎】
カムチャツカの若者がきりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は 朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が ほほえみながら寝返りをうつとき
ローマの少年は 柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球では いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと そうしていわば交代で地球を守る
寝る前のひととき耳をすますと どこか遠くで目覚まし時計のベルがなってる
それはあなたの送った朝を 誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
【今月の詩と詩人 谷川俊太郎】 1931年、東京生まれ。詩人。詩集『二十億光年の孤独』を刊行以来、詩やエッセー、翻訳、脚本など幅広く活動している。現代を代表する詩人の一人。安城学園の歌「いまここに」の作詞者でもある。代表作は多数。「生きる」「朝のリレー」「空の青さを見つめていると」「あい」「うつむく青年」「世界が私を愛してくれるので」「魂のいちばんおいしいところ」などは私の好きな詩です。紹介した「朝のリレー」は1982年の作品でコーヒーのコマーシャルのなかで読み上げられました。世界の人たちが一緒にこの地球上に生きている、そんな思いを強くした詩でした。「いつもどこかで朝が始まる、というフレーズが気にいっています。
【「初心を貫く」の初という漢字について】 「初心」という字の「初」という字は衣(ころも)偏に刀(かたな)と書きます。昔、着物をつくるときに、まっさらな布地に刀、はさみを入れる、はさみをいれて失敗するかもわからない。しかし、新しいものを生み出すために勇気を奮って刀、はさみをいれ、新しいものを作り出す、そうした意味から「初」という漢字は生まれています。新しいものをつくり出すために今までの自分から大きく変わろうとする、今、立っているステージから新しいステージにあがっていく、そんな気持ちを初という漢字は表しています。(鎌倉時代の能楽師「世阿弥」の花伝書に「初心」という言葉は紹介されています)そう考えると「初心」は厳しい言葉のように思えてきます。今の立っている地点を忘れずに、しかし、今までの自分自身をばっさり裁ち切って、新たな自分を創りにいく、そうした挑戦心や気概を持って新しい学年の舞台に立って「初心を貫いて」努力を継続して欲しいと願っています。
【涙を止める薬を下さい】
“涙を止める薬を下さい”は4月18日の中日春秋の出だしの言葉です。コラムは作家の小川洋子さんがそうしたエッセーを書いています。コラムは熊本地震の惨状を書き、被災者の人は涙がとまることはないでしょう、と書いています。涙を止める薬はないが、少しでもそのかわりになるものとしたら支援しかないでしょう、と続け、駆けつけた人に東北や関西の被災地の人が多い、涙を止める薬を貰った人はその痛みを知っているからだ、だから泣いている人に一刻も薬を届けようとする気持ちになる、大自然を前に人の力の小ささを思うがそれでも誰かに薬を届けたいと思う人の気持ちの崇高さを叫びたい、と結んでいます。やさしいコラムだとつくづく感じました。
毎日の義援金提供者を報じる紙面は優しさで溢れています。ある幼稚園が発したラインに対して全国の人が応え、物資を送ったという記事も掲載されています。現地へ出かけてボランティアに参加する人もたくさんいます。小さな事でも支援の動きに参加する、そのことが重要です。涙を止める薬はみんなが持っている、そんな気持ちを強くする震災に関する報道です。本校生徒会も震災への義援金集めを始めています。生徒たちの活動も応援していきたいと考えています。
【幸せとはなんだろう】
ウルグアイのムヒカ前大統領が4月に日本を訪問しました。前大統領の有名な言葉としては次の言葉があります。「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、限りなく多くを必要とし、もっともっとと欲しがることである。ハイパー消費社会を続けるためには、商品の寿命を縮めてできるだけ多く売らなければなりません。10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです。長持ちする電球は作ってはいけないのです。もっと働くため、もっと売るための使い捨て社会なのです。私たちは発展するために生まれてきたわけではありません。幸せになるために地球にやってきたのです。」そしてTVでは「一人ひとりにとって幸せとは何だろう、考えて下さい」と問いかけていました。そこで下記の詩を紹介します。吉野弘さんの「一枚の写真」です。 壇飾りの雛(ひな)人形を背に/晴着姿の幼い姉妹が並んで坐(すわ)っている/姉は姉らしく分別のある顔で/妹は妹らしくいとけない顔で/この写真のシャッターを押したのは/多分、お父さまだが/お父さまの指に指を重ねて/同時にシャッターを押したものがいる/その名は「幸福」〉。 こんな光景が幸せだと私も思います。日本全国に幸せが広がっていくことを願っています。
【新聞のコラム 中日新聞 中日春秋 4月22日朝刊】 <三日目の朝に降りくるこの雨を涙と思ふ 抒情(じょじょう)は遠し>。これは、宮城県名取市で東日本大震災に遭った歌人・斉藤梢さん(55)の歌だ▼九州の被災地に繰り返し雨が降る。もろくなった地盤が崩れるのでは、と安否不明者の捜索もままならぬ。地震発生から一週間。九万を超える人々が避難生活を送り、二次災害の恐れから、別の避難所へと移らねばならぬ人たちも大勢いる。あまりにむごい涙雨である▼<避難所に人あふれゐてコンクリートの床にも空きなし車中に戻る>。斉藤さんも五年前、車中での避難生活を強いられた。そんなときでも歌を詠み続けたのは、「今の生の状況を言葉で残し、伝えたい。届けたい」という願いからだったという▼そうしてできた歌集『遠浅』を開けば、こういう歌が並ぶ。<服のままの一昼夜ひとつふたつみつ毛穴苦しく詰まりゆくなり><快晴の朝空にある飛行機雲 配布の長い列より見てゐる>。熊本や大分の人々の現在進行形の思いをそのまま表したような三十一(みそひと)文字だ▼足りぬ避難所、エコノミークラス症候群などによる震災関連死、届かぬ物資…。教訓という言葉が何か虚(うつ)ろに感じられるほど、同じ光景、同じ苦しみが、震災のたびに繰り返されている▼被災した人々の涙も、助けたくても助けられぬ、届けたくても届けられぬという悔し涙も、もう十分に流されたはずなのだが。
【4月の推薦図書 「黒幕のゲルニカ」 原田マハ 新潮社 1728円】
「楽園のキャンヴァス」「ジヴェルニーの食卓」などの作品を出した原田さんの最新本です。新刊がでるのを待ってすぐに購入しました。絵画の見方や魅力も伝わってきます。今回のテーマはスペインの街への無差別攻撃に対する怒りをこめてピカソが描いた「ゲルニカ」です。反戦・抵抗の象徴とされてきた絵です。長編小説ですが一気に読み進めることができます。読んだら原田マハのファンになっていくと思いほど優れた作品です。
【5月の行事】
5月 6日(金) 生徒総会
5月 7日(土) PTA総会・1年進路ガイダンス・学級懇談会
5月14日(土) 土曜講座
5月16日(月)~19日(木) 第1回定期試験
5月20日(金)~22日(日)理科生物セミナー
5月21日(土) PTA第2回役員会
5月23日(月)~6月18日(土) 教育実習生受け入れ期間
5月28日(土)~29日(日)生徒会合宿